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久しぶりの『温故知新』は、
1999年11月に当時のユニゾンの講師が記したコラムから。
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『部下指導に失敗する落とし穴』

「人はすべからく事上に在って磨くべし」(陸澄)と昔から言われているように、
人の指導育成は現場の経験を通じてなされることが基本である。
これは、いわゆるOJTと言われるやり方である。

多くのマネージャーは、そのことを認識して自分なりの努力をしている訳だが、
思うように部下が成長してくれないと嘆くマネージャーも少なくない。
確かに、適性に欠けるなど、部下自身に問題がある場合もある。
しかしマネージャー本人がそれを言ってはおしまいである。
会社から部下を任され、自分も引受けた(部下を任された時点でそうである)以上、
不退転の気持ちで本人の成長を促す他はない。
その際、ヒントになると思われるチェックポイントを挙げてみる。

1.指導のポイントがずれている
 ここでいうポイントとは、知識的、技術的なことよりは、むしろ物の見方、
 考え方のことを指している。若手の部下を指導する場合は特に重要なことである。

 例えば、「お金にもならない客に、なんでそんなに関わっているんだ!
 顧客満足だけでは利益は稼げるわけないだろう。そんなこともわからないのか!」
 「目標にはほど遠かったけれど、よく頑張ったよ。こんなご時世だからね…」
 などというような指導を上司から繰り返し受けていると、間違いなく、その部下の
 仕事のスタンスは歪んでくる。ベテランになってから矯正しようとしても、
 大変難しいことは現実が示している通りである。

2.自分中心の指導になっている
 相手の立場に立つ、ということはよく言われることであるが、
 言葉で言うほどやさしいことではない。 自分で「こうだ」と思っていること
 自体が、既に相手の立場に立っていないことかもしれない。
 自分中心の指導でよく見受けられることとして、次のようなことが挙げられる。

 (1)経験主義に陥っている
   自分の過去の経験や見聞をモノサシにして指導しようとする姿勢である。
   以前はこうだった、自分はこうしてうまくやった、といった具合である。
   部下からすれば、「昔と今は全く違いますよ。もっとあなたも勉強したら」
   と心の中でつぶやきたくなりそうだ。

 (2)レベルの違い
   自分では易しく話しているつもりだが、部下の立場では難しくてわからない。
   マネージャーの方は業を煮やしてしまい、
   「あれだけ言ったのに、まだわからないの」となる。

 (3)自分の考えややり方を押しつける
   未熟な部下の場合は、押し付けてでもやらせなければならないことも多い。
   しかし、いつまでもそのような指導法を中心にしていると、いつの間にか、
   何も考えない部下にしてしまう。「うちの連中には指示待ちが多い。自分で
   考えようとしない」とボヤくマネージャーには、押し付け派が多いようである。

3.教え方が画一的である
 「桜切るバカ、梅切らぬバカ」と言われるが、
 要は人を見て法を説かないやり方である。

 一言、二言言えばわかる相手に対してくどくど説明してやる気をなくさせてしまう。
 叱り飛ばせば結構やる気を出すタイプに対して、逆に励ましたりする。
 要は心理音痴である。また、状況音痴のマネジャーもいる。
 グループ全体がどうしてよいかわからずにとまどっているような時に、
 いつものように「さぁ、気合いを入れて頑張ろう!」と精神論を振りかざす。
 状況を適確に見抜いたり、判断したりすることができず、
 いつもワンパターンになってしまっているのである。

4.口先だけでアクションを取らない(取らせない)
  親が我が子をしつける場合、よく耳にする言葉、「あれほど言ったでしょう」
 「何度言ったらわかるの」「今度やったら許しませんよ」…。
 ただ叱るだけで、アクションを取らない。あるいは取らせない。

 こういうことを何回も繰り返していると、子供はどう受け止めるか。
 「あぁまたか、うるさいな」ぐらいで終わってしまうだろう。
 このような環境で育つと、他人の注意や叱責を真に受け止めることは
 少なくなってしまう。このようなことは職場でも同じことが言える。
 何度か注意しても改まらない場合は、強制力を発揮してでもアクションを取らせ、
 改善させなければならない。それは単に業務上の問題だけでなく、
 場合によっては人間性という、もっと根本的な問題に関わることである。

5.率先模範をしない
 マネジャーは人の上に立つ立場にある。
 それ故、その言動においては目立つ存在であるという自覚が必要であろう。
 平素、立派なことを言っていても、その行為が伴っていないと、部下は聞く耳を
 持たないばかりか、権威そのものまで疑ったり、否定したりするようになる。

 凡人にとっては、言行一致ということは大変難しいことではある。
 しかし、少なくともそのための努力をしている姿勢だけは示したいものである。

このような落し穴に入らないようにするには、
自分に厳しいセルフチェックが必要だろう。
しかし、落し穴というのは、気が付かないから落ちてしまうものなのである。
だとすれば、そのことを気付かせてくれる周囲の声に、
謙虚に耳を傾ける姿勢こそが大切なことだと言えるだろう。