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国内で自動車が売れない。
これは、昨今の製造業不況に拠るものばかりではない。
実はそれ以前から、国内販売は苦戦が続いていると聞く。

その要因として挙げられているのが、“若者のクルマ離れ”である。

バブルの絶頂期に青春時代を過ごした私などからすれば、
ちょっと想像ができない若者たちの価値観の変化である。
当時の私(を含めた多くの若者)はクルマに夢中だった。
いいクルマに乗りたい、いいクルマで彼女とドライブしたい、
などと無邪気に思っていたりしたものだ。

そんな私たちを現代の若者たちが見たら、
“なんと脳天気な…”と思ったに違いないであろう。

それはさておいても、
クルマに興味を示さない若者が増えているというこの傾向は、
生活基盤を都市圏に置いている若者たちに、特に顕著であるらしい。

さもありなんと思う。極論すれば、都市圏で生活している限り、
クルマがなければ生活に支障をきたすなどいうことは一切ない。
かてて加えて、とにかくクルマは金食い虫だ。

種々の税金、保険代、燃料代、維持費、駐車場代…、
たとえ動かしていなくても多額の経費がかかる。
若者たちに限らず、堅実な考えを持っている人ならば、
都会でクルマを所有しようなどとは考えないと言っても良いと思う。

だから私は、“若者のクルマ離れ”などいう報道を見聞きしても、
彼らの見識に感心こそすれ、そのことを嘆くようなことはなかった。
財布にも環境にも良いのだから、これも現代の価値観だろう…と。

ところが…、これがどうやら良いことばかりでもないらしい。

昨今、複数の企業の人事担当者から同じようなぼやきを聞いた。
「ウチは車がないと仕事にならないのに、
 免許を持っていない新入社員が増えているんですよ…」

都市圏とは言え、自動車がなければ仕事にならないビジネスは結構ある。
多くは、ルートセールスやサービスエンジニアといった顧客接点活動を
行う仕事だ。学生もそのことを承知の上で志望したはずなのに…と、
人事担当者たちは首をひねっている。

それでも大半の学生たちは、卒業までには免許を取得するそうだ。
しかし、中には「仕事で必要な資格なのだから、免許取得費用は
会社で負担して欲しい」と真顔で迫る学生もいるのだそうだ。

また免許は持っていたとしてもペーパードライバー比率が高く、
現場に配属する前に新人を自動車教習所に通わせている会社や、
運転技能が未熟な若手が増えて事故が多発しているなどいう会社もある。
このような企業の負担は、決して軽いものではない。

自動車の運転技能も、語学や各種技能と同様だと考えれば、
本来、自らの負担・自らの責任で習得すべきだと私は思う。

さりながら、一方で私は、昨今の若手社員の間には
“仕事で必要な能力を開発するための負担は企業が負うべき”
という価値観が広がりつつあるとも感じている。
昨今の経済状況下でその傾向にブレーキがかかってきてはいるものの、
若い世代の価値観は侮れない。“若者のクルマ離れ”も然りである。

彼ら若い世代の価値観を敏感に察知して、いち早く、自社の経営に
具現化できることが、企業生き残りの条件の一つになるかもしれない。