【PR】『はじめての管理職100問100答』こちらから購入できます!【PR】

思いがけず、旧知の営業マネージャーが訪ねてきた。

彼は私が前職の時にお世話になった営業マンで、
私がユニゾンに転職したのとほぼ同時期に今の会社に転職し、
数年前からは管理職となってバリバリ仕事をこなしていた。

昨年はお会いする機会を持てなかったが、それでも時々は
電話やメールで近況のやり取りをしていた。

そんな彼の突然の来訪には理由があったようだ。

彼の会社は“従業員の幸せを実現する”という基本理念のもと、
創業者でもあるオーナー社長の強力なリーダーシップによって、
極めて順調に成長してきていた。ワンマン経営の嫌いはあったにせよ、
人を大切にする企業文化があることに彼は満足していたそうだ。

ところがここ数ヶ月で、業績が急激に悪化してきた。
社長は、基本理念をかなぐり捨てるかのような方針を矢継ぎ早に
打ち出し、組織の士気が著しく低下してきてしまっていると言う。
最近では退職者も後を絶たず、組織はさながら“空中分解の体”を
なしているとのこと。

そして管理職である彼には、自らの部下の数を減らすこと、
残業をさせないよう指導徹底することが求められているそうだ。

彼自身は残業を禁じられた部下たちの仕事を肩代わりする毎日で、
心身共に疲れている様子。“何のために頑張ってきたのか…”と
力なくつぶやいていた。

私が知る限り、彼は組織の酸いも甘いも噛み分ける苦労人である。
その彼をして、かようなぼやきを言わしめる状況であるとすれば、
彼が置かれている立場は相当に辛いものだと想像された。

厳しい時代がやってきている。
非正規雇用従業員の雇い止めや解雇は言うに及ばず、
正社員ですら“今までと同じ”ではいられない時代だ。

工場の閉鎖や移転で転勤を迫られる人、
未経験の職種に配置転換される人、
グループ会社への出向や転籍を命じられる人…、
自らの意に添わない方針に従うか否かで迷う人が益々増えるだろう。

そんな時に我々はどうするべきなのだろう?

残念ながら、その答えは私にはわからない。
当然、訪ねてきてくれた彼に有効なアドバイスなどはできなかった。
ただ一つ、帰りしなに彼が私に話してくれたことだけは確かだろう。
「自分で決めなければならないんですよね…」

従うにしろ、従わないにしろ、覚悟が求められる時代である。