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山崎豊子さんの「沈まぬ太陽(文庫版:全5巻)」を読んだ。

沈まぬ太陽(御巣鷹山編)
彼女の作品は頻繁に映像化されている。
「白い巨塔」「不毛地帯」「華麗なる一族」は、
映画・ドラマで何度も映像化されているし、
10年位前?にNHKでドラマ放映されていた
「大地の子」は、私も毎回楽しみに見ていた。

ただ、これは私の偏見なのであろう、
やたらと映像化されている彼女の作品を
今まで敬遠してきていた。

今回この“食わず嫌い”を検証すべく、テレビドラマでは「不毛地帯」が、
映画ではこの「沈まぬ太陽」が、それぞれ映像化されるこの機会に!と
まず手に取ってみたのが「沈まぬ太陽」である。

ご存じの方も多いと思うが、この小説のモデルとなっているのは、
昨今巷で再建問題が取りざたされている航空会社で、
小説でこの会社は“国民航空(NAL)”となっている。

各巻の冒頭部「事実に基づき…」とご丁寧に注釈してある通り、
この小説をノンフィクションとして読んでみると、
相当にショッキングな内容である。この本を読んだ読者の大半が、
“こんな会社は早くなくしてしまえ!”と思うのではなかろうか。

最新号の日経ビジネスにも取り上げられていたが、
この時期にこの作品が映画化されたのには相応の理由があるのでは?
と勘ぐりたくなるほどの内容である。

読後、色々と思うところはあったものの、
個人的には「御巣鷹山編(文庫版第3巻)」が圧巻であった。

実際の墜落事故があったのは1985年、私はもうすぐ18歳になる頃で、
連日報道されるニュース映像を見て「これは酷い…」と思ったものだ。
そんな記憶が鮮明に蘇ってきたからであろうか、
不覚にも何度も涙腺がゆるみそうになってしまった。

あの凄惨な事故を記憶している人であれば、事故後の“NAL”を
描いた後半部分は素直に“許せない”と感じてしまうだろう。
あくまでもそれが本当に事実に基づく内容であるならば、であるが。

いずれにしても、読み応えのある小説であるのは間違いない。