「今は我慢しなきゃならない時なんだぜ!」
話の内容から察するに、建築現場で働いている若者二人が話をしている。

先輩とおぼしき若者が「このまま妥協すんのかよ!」と投げかけると、
「自分も仕事で妥協するのはイヤっすけど・・・」と後輩が言葉を返す。
帰宅するために乗り込んだ地下鉄車内で遭遇した風景である。

二人の会話に聞き耳を立てながら驚いた。
「あのとき俺は、お前は偉いなぁと思ったんだぜ・・・」
先輩の方は後輩をあおったり褒めたりしながら、仕事を通じて
自分がどれだけ成長してきたか、今の仕事の魅力を熱く伝えていたのだ。

今どきの職場で、これほど熱く自分の想いを語れる管理職がいるだろうか?

私たちの MIP(統合対話力強化研修)では、
「統合対話の“7つのプロセス”」という対話手法を紹介している。
部下が責任を引き受けて、自発的に「よし、やるぞ!」という意欲を持って
仕事に取り組むよう導くのが、「統合対話の“7つのプロセス”」である。
そのうち、昨今の管理職が最も苦手とするのが、「想いの統合」である。

「想いの統合」とは、
自分が引き受けた責任をどれだけ真剣に成し遂げようとしているのか、
その熱い“想い”を部下に引き受けてもらうというプロセスである。
昨今の管理職には、総じてクールなタイプが多いのだろう。
そのことが「想いの統合」を難しくしているようだ。

「俺は今の仕事に賭けている。全力を尽くすから一緒にやって行こう!」
というような管理職はめっきり少なくなった。浪花節は流行らないのだろう。
けれども、自分の仕事に熱中している上司の姿をまぶしく感じる部下はいる。
そして、熱い“想い”を素直に語れる潔さもまた上司の魅力ではなかろうか。

私が地下鉄を降りる際、若者たちは「想いの統合」の真っ最中であった。