数年前ニュージーランドを訪れた際、移動手段はバスでした。
彼の地のバスで驚いたのは、降車するほとんどの乗客が
運転手さんに「Thank you!」とお礼を言っていたことです。

私も外食した時や、買い物をした時、店員さんにお礼を言うことは
ありました。しかし、バスを降りる際に運転手さんにお礼を言った
ことはありませんでした。

日本に帰ってから早速実践してみようと思っていたのですが、
なんとなく気恥ずかしく感じて実践できないままでした。
そのうち運転手さんにお礼を言う意識すらなくなっていました。

ところが数ヶ月前、ふとこのことを思い出し、
バスを降りる際に「ありがとうございます」と声に出してみました。
意外にも(?)運転手さんもきちんと返事をしてくれました。
それがとても嬉しかったので、その時以来、バスを下りる際には
お礼を言うのが習慣になっています。

そんなある日、およそ愛想がいいとは言えない運転手さんの
バスに乗車しました。乗客が支払いの際にとまどっていたりすると
「早くしてよ!」などと怒るのです。
それでも、私はお礼を言って降りました。

まったくの偶然、その数時間後に同じ運転手さんのバスに乗る
羽目になりました。「イヤだなぁ」と思いながらも乗車しようと
すると、先ほどとは別人のような笑顔で迎えてくれました。
先刻、私がお礼を言ったからかどうかはわかりませんが、その時、
「ありがとう」は魔法の言葉だという話を思い出しました。

魔法の言葉とまではいかなくても、「ありがとう」の一言が
素敵な気持ちを運んでくれるのは間違いないようです。