もし高校野球の女子マネージャーが
昨日に引き続き、最近読んだ本の紹介を。

「もし高校野球の女子マネージャーが
ドラッカーの『マネジメント』を読んだら」


今話題の本である。
昨年末に出版されたばかりだというのに、
既に13万部を突破し、ドラマ化・映画化
の話も出ているそうだ。

作者が“AKB48”絡みの人であるというメディアの触れ込みと、
この“萌え〜”的な表紙デザインには気後れしつつも、職業柄、
ドラッカーにまつわる本となれば手に取らない訳にはいかない。
購入して2日間で読み終わった。
読み終えて、売れている理由がよくわかった。
万人受けするストーリーだと思う。

多くの日本人が感動できる素地を持つ高校野球という舞台で、
弱小チームが様々な苦難を乗り越えて甲子園に出場する。
お涙頂戴的な青春ストーリーの王道をしっかり踏襲した筋立て。

新しいのは(言うまでもなく)この本のタイトルを含め、
そんな青春ストーリーには一見そぐわないビジネス書の古典、
ドラッカーの『マネジメント』を登場させたことに尽きる。
読者に“なんだろう?”と興味を抱かせるには十分な仕掛けだ。

そしてこの仕掛けにはまった読者、
特にティーンエイジャーなどは“すごく感動した!”という
感想を述べるであろう程度に良くできた物語である。

誤解を恐れず敢えて辛辣な物言いをすれば、この本は“色物”だ。
これだけ売れているのも、企画の勝利と言って良いだろう。
けれどもこの着想を誰が思いついたであろうという点において、
“コロンブスの卵”である。

私たちは職業柄、ドラッカーには慣れ親しんでいる。
それでも、ドラッカーの『マネジメント』を高校野球の女子マネに
移植することで価値が生まれるなどとは思いもよらなかった。
これは作者の岩崎夏海さんの、まさに“イノベーション”だ。

彼の着想の卓抜さとエンターテインメント魂に敬意を表しつつ、
この本がきっかけとなって、ドラッカーの本家『マネジメント』が
より多くの人の目に触れることを願うものである。