【PR】『はじめての管理職100問100答』こちらから購入できます!【PR】

色々な企業の管理職研修を手がける中で、
日本企業の特徴的な傾向に気づくことがある。

その一つに、『研修中に実名を挙げたがらない』ということがある。

私たちの管理職研修では、実際に受講者が抱えている問題や、
今まさに取り組んでいる課題を、研修のケーススタディとして
挙げてもらっている。
講師はその際に、ご自分の上司や部下の実名を挙げることを
強くお願いするのだが、このことを躊躇する方が少なくない。

無論、これは無理からぬことだと思う。

初めて会う社外講師の前で、しかも同じ会社の同僚たちの前で、
自分の上司や部下の実名を挙げて問題や課題を論じることには
憚りや抵抗感を感じるのが当たり前である。

またその本人の名前を挙げることで、本人に対して抱いている
印象や感情を、研修に参加している人間に気取られたくない、
という心理が働くこともあるだろう。

しかしながら私たちは、余程の差し障りがない場合を除いて、
極力名前を挙げてご自分の考えを述べてもらうようにしている。
なぜならば、問題や課題には必ず『人』が介在しているからである。

例えば、チームの成果がふるわないという問題がある場合、
部下の全員が揃って、同じ程度に不振であるということは、
ほとんどない。AさんとBさんは健闘しているにもかかわらず、
Cさんが極度の不振に陥っている、などいうようにバラツキが
あることが過半である。

こんなとき、チーム全体の成果を確保するために、管理職が
こだわって取り組むべき課題は、Aさん・Bさんに注力する場合と、
Cさんに注力する場合とでは、当然その内容が変わってくる。

このような個別の問題・課題にかかわる事案において、
『登場人物』の名前を隠してしまうことは、その問題や課題を
恐ろしく抽象化・観念化してしまう恐れがある。

そうなってしまうと、その問題・課題を抱えている受講者は
机上の思考に留まってしまいがちになる。具体的かつ実践的な
解決策に至る思考の幅を狭めてしまうのだ。

昨今は、とりわけ部下の名前を挙げたがらない方が多い。
そのような方に「なぜ、実名を挙げないのですか?」と尋ねると、
「悪者探しをしているようだから…」とお答えになったりする。

もちろん私たちは、『悪者探し』を励行しているわけではない。
効果の高い解決策を得るためには、問題や課題に付いている
『人』を明らかにして考える必要があると言っているだけだ。

それでも、実名を挙げることが『悪者探し』に繋がる、
と考える方がいらっしゃるなら、是非考えて欲しい。

あなたが管理職であるなら、あなたの部下には悪者はいない。
それでも悪者探しが必要ならば、悪者は一人しかいないのだ。
言うまでもなく、それは…