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おそらく何事においてもそうであろうと思われることに、
『立場の違いは実際に相手の立場に立ってみないとわからない』
ということがある。

ビジネスの最前線においても然り。
顧客第一主義だとか、顧客中心主義だとか、購買者意識を持てだとか、
『顧客の立場に立つ』ことの重要性が喧伝されて久しいにもかかわらず、
売る側と買う側との意識の間には、依然大きな隔たりがあるように感じる。

しかしこれは、ある面では無理からぬことだとも言える。

例えば、目先の業績に追われている営業マンが第一に考えるのは、
極論してしまえば、顧客の真のニーズよりも「売る」ことだろう。
そんな営業マンに向かって、上司が「顧客の立場に立って考えろ!」
などとアドバイスするのはナンセンスとしか言いようがない。

そのような念仏を唱えるがごときアドバイスをするくらいなら、
いっそ主客を逆転するトレーニングをお勧めする。
営業マンに購買者としての経験を積ませるのだ。

これは、営業のキャリアしかなかった私の経験に基づく提案である。
現在の私は、色々な営業マンからの提案を受ける立場にもある。
つまり、購買側の心理を持つ経験をしているのだ。

一営業の目線から購買者の目線に転じてみると、
営業マンの心理が手に取るようにわかる気がする。
「あぁ、こんなことを質問したいのだろうなぁ…」とか、
「クロージングすることが怖いんだろうなぁ…」とか、
「この辺まで条件を譲歩する気があるんだろうなぁ…」などなど。

そのような目線で各社の営業マンと接していると、
実は自らの営業活動の至らなさに気づくことも多い。
他の営業マンの見取り稽古がこれほど役に立つとは思わなかった。

けれども、実際問題として、世の営業マンに購買者としての経験を
積ませるのは容易ではないかもしれない。彼らの上司からすれば、
「そんな暇があるなら、売ってこい!」というのが本音だからだ。

それでも私は、この主客逆転トレーニングには、
しばしの間の業績低下を覚悟してでも取り組む意義があると思う。

大企業であれば購買部門に期限付きで出向させても良し、
小さな組織なら社長の代わりに業者の窓口をさせても良い。
感度の良い営業マンを3ヶ月程度、そのような任務に就かせてみる。
その効果は絶大であると思う。

本気で商品やサービスを購入する、そのような立場を経験することは、
どんなに素晴らしい営業研修を受けさせることよりも勉強になる。

冒険心旺盛な営業マネージャーには、是非、
部下の営業マンのトレーニング方法として採用していただきたいものだ。