次号ユニゾンTOPICS Vol.19 に掲載予定の
「温故知新:『報告』に見られるマネジメントの落とし穴」の全文をご紹介します。

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研修で学んだことが実践されない、という声をよく耳にする。

これは研修の専門企業にとっても由々しき問題である。
しかし、解決策とは言えなくとも、打開策ぐらいならある。
それは、研修後実践せざるをえないように仕掛けをすることである。

そのひとつがフォロー研修である。つまり、本研修の2〜3ヶ月後に、
実践してきたことの報告を中心に、再度研修を行なうことである。

当然、その時はきめ細かな実践内容を記述した報告書を持参して、
研修会に臨んでもらうことになる。場合によっては、
この種のフォロー研修を2回、3回と繰り返し行なう。
そうすると、いい加減な研修生の場合も大抵は取り組むようになる。

実践するようになれば、本人の改善点も次第に明確になってくる。
格別現場で観察するわけではないが、報告書を見れば大体のことはすぐわかる。
マネジメント力の弱いマネジャーの場合は、
次のような共通した傾向が報告書の中に見られるのである。

1.成功要因・失敗要因の分析が甘い

実践したことがなぜうまくいったのか、
あるいはいかなかったのかの分析ができない。
「こういう結果であった」という単なる結果報告の傾向が強い。
特に成功した場合の要因分析が苦手のようである。

自分自身のやってきたことを客観的に振り返ることができないということは、
明確な意図と強い意識のもとで日常の仕事をやっていないとも言える。
いずれにしても、成功や失敗から学び取ることができないのは致命的である。

2.事前に予測される問題に対して手が打たれていない(計画に入っていない)
ある事を集中してやろうとすれば、別なことがおろそかになる可能性は充分にある。
そういうことに気が付かない。例えば、新規開拓を重点的に推進すると、
既存客のフォローがおろそかになるのは充分考えておかなければならないことである。

ところが報告書の中で、既存客からの売上げが低下し、
競合相手に取られた所も発生した、などと平気で述べているのである。

3.途中で判明した問題が、その時点で修正されないまま納期まで放置されている

3ヵ月後の報告研修会で、
「部下任せにしてしまい、チェックをおろそかにしていた」というような報告も多い。
部下任せにしていたことが、3ヶ月間もわからなかったのだろうか。
少なくとも1ヶ月して振り返れば気が付くことであろう。

単純なことにさえ気が付かないのは罪である。
気が付いても改めないのは更なる罪である。

4.単純な成功の決め手が実践されない

単純な成功の決め手とは、「こだわる」ことである。
日常の業務を通じて解決したい課題は、
それほど創造的な知恵を必要とするものではない。

まずは手を抜かず、地道にコツコツとやり抜いていくことである。
そのためには、テーマアップした課題にこだわり続けることである。
また、部下に対してもこだわらせ続けることである。

このような単純なことさえ実践できないのは、
よほど自己管理能力が欠如しているか、さもなくば責任を放棄しているかである。

5.繰り返し生じている問題に対して、繰り返し同じような手立てで臨んでいる

「新規開拓はこのようなやり方で進めたのですが、思うような結果が出ませんでした」
「今回初めて取り組んだのですか?」
「いいえ、過去何回もやってきています」
「今回やったことと前回やったことでは、何が違っているのですか?」
「……、前回と同じです」
「前回と同じことをやっても、今回はうまくいくと思ったのですね。何故ですか?」
「……………」

6.業績のための手立てが多く、活力を引き出す手立てが殆ど見られない

業績をあげるための手立てをあれこれ考えることは結構なことである。
しかし、部下グループの業績を産み出すエネルギーにも関心を持つ必要がある。

部下を動かすのは、モノやコトを動かすのと同じように考えてはいけない。
数値目標を設定し、チェックとプッシュだけでうまくいくなら、
失敗するマネジャーなどいなくなるはずである。

7.データの分析・読み取りから、問題や課題を見つけ出すことが苦手

営業マネジャーのフォロー研修では、
特にデータが報告書に添付されることが少なくない。
パソコンの普及に伴って、販売実績のデータばかりではなく、
個々人の行動データまできめ細かく管理されるようになってきている。
それはそれで良いことではあるが、「なんのために」と言われると、
今ひとつ納得のいく回答が得られない。

前年対比で伸びていないとか、訪問件数が低下してきているとか、
数字を見れば誰でもわかるようなことをあげつらっても、あまり意味はない。
数字の裏にどのような問題が潜んでいるのか。
このことが見抜けられる努力を惜しんではいけない。


8.マネジャーらしい戦略や新しい試みが少ない

日常的な業務の中で新しい試みを次々に出すことは無理にしても、
研修という非日常的な状況の中では、
もう少し何か変わったやり方をしてみようという姿勢が欲しいものである。
変革とか革新とか挑戦といった言葉とはかなりかけ離れた実践内容になっている。

9.集団発想(集団でこうやった)が強く、マネジャー自身の指導内容が見えない

集団全体でこうした、部下グループにこういうことをやらせた、
という報告が大部分である。
その中で自分自身は何をした、が多く欠落しているのである。

自分を主語においた発想が乏しいと、自分自身の振り返りも弱くなる。
そして1で指摘した要因分析も甘くなるのである。

10.繰り返し同じような問題や原因が記述され、成長の跡を感じさせない

フォロー研修を数回繰り返す場合に見られる傾向である。
「やらせっ放しにしていた」「きめ細かな指導をしなかった」
といったような問題に対する原因が毎回記述されるケースがある。

前に反省したことを忘れ、また改めて反省をし直すのである。
まことに始末の悪いタイプである。