久しぶりに、報道ステーションを見ていたら、
相次ぐ飲酒運転による事故の特集をしていた。

非常に驚いたのは、
飲酒運転の上のひき逃げで、被害者を死亡させた被告が、
酔いを覚まして自首をしてきたので、
飲酒運転によるひき逃げの罪が立件できず、
より刑の重い危険運転致死傷罪に問われなかったケース。

“これでは、逃げ勝ち”
と憤懣やるかたない様子の遺族のインタビューに、
暗澹たる気持ちになった。

犯罪の検挙率も低下の一途をたどると言われている昨今、
悪いことをすれば必ず報いを受ける、いう教訓は、
昔話の中だけの教えになってしまうのだろうか。

飲酒運転や犯罪と同列に扱うわけにはいかないが、
逃げ勝ちに類する価値観の浸透を、ビジネスの世界でも感じることがある。

入社間もない新入社員が理由も告げずに会社を辞めてしまった、
仕事で辛いことが続くとすぐに異動を希望する、あるいは、
異動の希望が聞き入れられなければ躊躇なく転職に踏み切る。
人事担当者からそのような従業員の話を聞くことは珍しくない。

彼らが“逃げた”と思っているか、はたまた、その後の彼らが
“勝った”と思っているかどうかはわからないが、見方を変えれば、
仕事や働き方の選択肢が増え、自己責任で選択できるのだから、
私たちは幸せな時代に生きている、と喜ぶこともできるだろう。

にもかかわらず、私自身は釈然としない思いも持っている。
“逃げるが勝ち”的な価値観を潔しとできない人が減ってしまうのは、
とても寂しいことである。