最近は、商品知識が豊富な営業マンが増えている。
もちろん、商品知識はあるにこしたことはない。
お客様の質問に何一つまともに答えられないような営業マンなどは
お寒い限りである。しかし、豊富な商品知識が徒となるケースもある。

典型的な例を紹介すると・・・
我が社はかように立派で、我が社の商品はこんなに素晴らしい。
と綺麗な資料をめくりながら、まるで多くの聴衆が聞いているかのごとく
説明を続ける。お客様が質問をしたくても、そんな隙すら与えない。

私は、他社の営業マンから売り込みを受ける立場にもある。
このような営業マンに出会う機会も少なからずある。

そのような時は必ず、営業マンの説明が一段落したところで、
「それで?」と尋ねるようにしている。そこで、その営業マンが
「ですから、是非買って下さい!」とでも言ってくれるのなら、まだ溜飲が下がる。
しかし大抵は、ご丁寧に「かくかくしかじか」と再度お説を頂戴することとなる。

なぜ、そのようなことになってしまうのか?

一つには、お客様の質問や反対が怖くて、
しゃべり続けてしまう営業マンの心理が想像できる。

もう一つには、商談の場をプレゼンテーションの場と同義に捉える風潮が
あるのかもしれない。確かに、商談の場も一種のプレゼンテーションの場ではある。
しかし、大勢の聴衆に対してワンウェイで行うプレゼンテーションと、
お客様に面と向かうツーウェイのプレゼンテーションでは、当然勝手が違うのである。

真剣に購入を検討している場合、
このような営業マンに出会うと、私は内心“しめしめ”とほくそ笑む。

全てのセールスポイントを挙げ連ねてもらった上で、
「お宅のセールスポイントはよくわかりました。
 でも、大体よそ(競合他社)も同じだよね?」
と一言添えるだけで、後はたやすく価格交渉に持ち込めてしまう。

セールスポイントの出し惜しみをしろ、と申し上げているのではない。
世の中に似たような商品はない、
と万人が認めるものを扱っている営業マンでもない限り、
世の営業マンが扱う商品に、独自のセールスポイントは数えるほどしかないはずである。

その数少ないセールスポイントをムダに撃ってしまえば、
残りのタマ(切り札)は価格しかない。
私たちは、商談の場でセールスポイントをムダ撃ちすることを
立ち撃ちバンバン」と呼んでいる。

商談の立ち上がりで、「いきなり立ち撃ちバンバン、後は丸腰」
などという状況は避けたいものである。

商品知識が豊富な営業マンこそ陥りやすい罠とも言えるので、くれぐれもご用心を。