
最近お薦めの一冊。
「クラウゼヴィッツの戦略思考」
( T・ギーツィー、B・アーティンガー、C・パスフォード編著)
174年前に出版されたクラウゼヴィッツの「戦争論」、
一般に難解だと言われているこの書物を、編著者が
抜粋して解説を加え、再構築した本です。
目次を眺めると「戦略」の文字が躍っています。
戦略とはなんぞや?かくかくしかじかと
小難しい理屈が並んだ解説書のように感じるかもしれません。
しかし私にとっては、福音とも言える内容に感じました。
リーダーが迷った時に、拠り所とできる至言が随所にちりばめられています。
私は、読書をしていて気に入った言葉や文章を見つけると、
紙に書き留めたり、メールにして自分宛に送るようにしています。
ほとんど書き留めるべきものが無いビジネス書が多いと感じる昨今、
本書(特に「戦争論」の引用部分)からは相当量の言葉と文章を
抜き書きしました。その一部に以下のような言葉があります。
“真実だけで人を行動に駆り立てることはできない。
認識と意欲との間には、そして知っていることとできることとの間には、
常に大きな差が生じるものだ。
そして人を行動に駆り立てる最も大きな力は、常に感情から湧き出ててくる。
このような表現が許されるのであれば、
人間を動かす最も大きな力は知性と感情の融合体から生まれてくる。”
そしてクラウゼヴィッツは、
“知性が本当に真価を発揮するのは、
予想外の出来事や偶然と出会うときなのだ。”とも言っています。
クラウゼヴィッツが戦争における戦略を熟考して導き出した結論と同様に、
現代のビジネス社会においても、物事が思い通りに進むことなどありません。
よしんば今はその通りだとしても、明日もその通りである保証はないのです。
勝てるリーダーには、
クラウゼヴィッツが言うところの「不確実性」、
あるいは、現代で言うところの「想定外の事態」を
胆(ハラ)に落とし込む力が必要であることを思い知らされた迫力の書です。