私たちがクライアントの研修を実施するにあたって、
社内で頻繁に議論するテーマがあります。
それは、“「誰」に一番満足してもらえる研修を提供するのか?”。

研修を企画・推進される立場の方(人事担当者、事業責任者など)に対してなのか、
研修へ出席される方に対してなのか、多くは二者択一の議論となります。
もちろん、両者に満足してもらえるサービスをご提供できることがベストである
のは言うまでもありません。

しかし、この両者の利害は往々にして一致しません。
例えば、経営者が業績低迷の原因を“営業マンの能力不足”に見出して、
営業マン研修を企画したとします。

ところが、いざ私たちが現場へ入ってみると営業マンの能力はおしなべて高い。
また現場からは、
業績低迷の原因は“経営戦略の誤り”や“風通しが悪い組織風土”にある、
といった声が聞こえてくる。

このような場合、私たちは
できる限り多くの情報を収集・整理・分析して業績低迷の本質的な原因を探ります。
その上で、自らの信念と経験に基づいて、
経営者か現場、どちらかの嫌われ役に徹する決断をしなければなりません。
その苦しい決断に迷った時に拠り所としているのが、
“クライアントを支持する末端のお客様”に焦点を絞って考えてみる
というプロセスです。

クライアントのエンドカスタマーにとってより良い選択は何なのか。
クライアントと討議を重ね、時にはエンドカスタマーに出向いて話を伺ったりもします。

なぜなら、私たちはクライアントの立場に立って最善の課題解決を提供しよう
とするあまり、ややもすると“売り手”としてのクライアントの立場に寄りすぎる
判断をしてしまう恐れがある。そう認識しているからです。

この意識は営業活動を進める際にも必要です。
営業マンたるもの常にお客様の立場に立って考えることが重要だ、と言われます。
ところが、その営業マンにとってのお客様とは一体「誰」なのか?
という問いかけは、それほどなされていないように思うのです。

この問いかけに対して、例えば、ルートセールスマンであれば
代理店や販売店の担当者をまず思い浮かべるでしょうし、
また、システム商品を法人に販売する営業マンがまず思い浮かべるのは
情報システムセクションの窓口担当者になるのでしょう。

無論、これは間違いではありません。
しかしこの場合でも、代理店や販売店の先にいる消費者や、
情報システムを社内で活用するエンドカスタマーの支持がなければ、
営業マンである自分たちは支持され得ないことを、肝に銘じておく必要があります。

なんとなれば、営業マンが直接お取引をいただいている窓口のお客様と、
エンドカスタマーとの利害は必ずしも一致するものではなく、
エンドカスタマーの支持を得られないビジネスはいずれ排除されていくであろう、
と想像するからです。

ところが、数字がものを言うビジネスの世界では、
“売り手本位”の思想には抗いがたく、それゆえに浸透し易いものです。
誤解を恐れずに申し上げれば、
真っ先に忘れ去られてしまうのがエンドカスタマーの利益なのかもしれません。
だからこそ、多くの企業が“顧客第一”や“顧客中心”を理念に掲げ、
厳に自らを戒めているとも言えるでしょう。

昨今取りざたされる民間企業の不祥事には、
エンドカスタマーへの意識が欠落してしまった組織の終焉を見る思いがあります。
この種の報道では、
しばしば「あの会社は“顧客不在”だった」というような表現がなされますが、
私は“エンドカスタマー不在”という表現こそ適切である、と思っています。

“お客様がいなかった”のではなくて、
その組織の経営トップや上司、自社あるいは業界、もしくはそれらを潤す目的そのものが
お客様になってしまっていたのだろう、と思うからです。

“私たちの常識が私たちを支持してくれる末端のお客様の非常識”とならぬよう、
折に触れエンドカスタマーにフォーカスして考えることを心がけたいものです。
(unison1)