2/28 配信のメルマガ掲載記事「実践研修の5原則」の続き(メルマガ未掲載箇所)
をご紹介いたします。
研修事業に携わる者にとって、”実践的であること”は永遠のテーマかもしれません。

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1.3現主義をベースにしたわかりやすい指導

ここでいう3現主義とは「現在、現場、現象」のことである。対照語としては、
べき論、原理原則、観念論が考えられる。しっかりした指導をするには、
明確なべき論や原理原則が根底になくてはならない。

しかし、それらを生のまま打ち出したのでは「難しくてわからない」とか
「そんな綺麗事は通用しない」ということになってしまう。
現在の自分の仕事や問題、悩みに結びつけられて、初めて理解できるものである。

「うちの業界に精通した講師が欲しい」という要望をよく聞かされる。
勿論、それは望ましいことではある。
しかし、当事者である研修生以上に精通することは大変な難事である。

しかも、知り尽くすことには、かえって逆作用も出てくる。
「聞かなくてもわかっている、アーだろう、コーだろう」といった決めつけになり、
本人の個別事情に対する配慮が欠けることにもなりかねない。
あるいは、知り尽くすことによって、「どうせ言っても無理だろう」と言うような、
諦めが出て、鋭く追求しなくなることもある。

肝心なことは、研修生にとって3現主義で指導内容が絵になるか、である。
そのためには、研修生の皆さんから色々と訊き出し、
その状況に合わせた指導をすることである。

したがって、講師には少なくとも3つの事が要求される。質問力と状況の推理力、
そして、適切な質問ができるだけの業界の知識である。
なぜかしら、横文字を多用したり、難解な言葉をわざと使う研修も見られる。
権威づけの為であるとすると極めてまずい指導と言わざるをえない。

2.成果・業績に結びつける指導

研修にはそれぞれテーマと狙いがある。
したがって、指導内容もそのテーマに絞り込まれる。
例えば、リーダーシップ研修と言えば、内容は当然リーダーシップ論になる。
商談折衝力向上研修となると、ロールプレイング等で指導することになる。

このこと自体は、当然であり、大切なことである。
しかし、充分気をつけないと大変な落し穴に入ることもある。
つまり、研修テーマにのめり込んで、最終目的を見失ってしまうことである。

人材育成の最終目的は、より良い成果が出せるようにすることである。
ビジネスの世界では、育成できたか否かの測定はそれ以外に考えられないのである。

ところが、リーダーシップ強化の研修を例にとると、
リーダーシップの「論」に重点がおかれていつの間にか教養講座になってしまう。
あるいは人間心理の側面が強調されて、成果を求めるリーダーではなく、
人間関係重視のリーダーづくりになってしまう。

指導内容を最終成果にいかに結びつけるか、ということを絶えず念頭においていなければ、
ついついこのような落し穴に入ってしまうことになりかねないのである。

3.負荷をかけ責任意識を高める指導

一般的な研修では自己否定、現状否定が強調され、
どうあるべきかのべき論が説かれるケースも少なくない。

しかし、これだけでは単なる心構えの研修になりかねない。
したがって、学習内容を成果に結びつけるためには、
自分自身は「何をしなければならないか」を明確にする必要がある。
それも抽象的、観念的なテーマではなく、
具体的、成果的な課題が望ましいのは言うまでもない。

人間のやる気の源泉は様々であるが、そのうちでも責任感や使命感は、
特に重要な源泉のひとつである。
感動的な話しや教訓で責任感を高めることも当然ありえるが、
それだけでは意識が薄れていくのも早いものである。

自分自身に、「これをやり遂げなければ」という負荷を設定すれば、
責任意識も具体的な形で植えつけられてくる。

4.具体的なコーチングに重点をおいた個別指導

やるべきことが明確になれば、必然的に「どのようにすればよいか」が、問題になる。
極めて具体的なハウツウになるわけである。この点が曖昧だと現場での実践は危うくなる。
具体的なコーチングというのは、講師の方から一方的にやり方を教えるというわけではない。
むしろ、そういうやり方は好ましくない(研修生の皆さんはそれを望むが…)。

最初から手取り足取り、ああしなさい、こうしなさい、と指導したのでは、
依存心が高まり、自分の頭で考えようとしなくなる。
事実、上から指示されたことだけをやればよい、
あるいはルーチン作業だけをこなしておけばよい、といったことを長年経験してきた人は、
自分の頭で考えるということが中々できなくなっている。

さらに、一方的にコーチングをしたのでは、果たしてその本人の能力レベルや
状況にマッチしているかどうかが見えなくなってしまう。
うまくいかなかった場合の責任も自分が悪いのではない、ということになりかねない。

そこで、とにかく自分なりにどうすればよいかを考えていただく。
内容の善し悪しは二の次である。考えて出て来た内容を一緒になって考える。
まずい点があれば修正し、抽象的であれば具体的にアドバイスをしてあげる。
そして、自分なりに、自分の手でやり方をまとめた、という結論に導くわけである。
 
そのためには、個別指導が不可欠となる。
ユニゾンの実践研修が少人数でお願いしている所以である。

5.実践化をしかけ定着に重点をおく指導

研修指導で最も難しいことは、成果の測定と指導内容の定着である。
成果が出てきたと言っても、「研修のお陰で…」と言える部分を測定することは
困難である(逆に、成果が出ない場合は研修のせいにされることはあるが…)。

しかし、定着の方は大体観察することによって判断はできる。
ところが、教室を去り現場に帰ると、いつの間にか現場の忙しさの中に埋没してしまう。

研修後は個々人の自主性に任せて、と言えるほど、普通の人間は強くない。
実践研修でフォローアップが是非必要なのは、このためである。
社内体制が整って、実践化をしかけ、促進してくれる責任者が居れば、
社内でフォローは充分できるだろう。
しかし、そのような体制がない場合は2回、3回と、やや期間をおいて、
フォローの為の研修を行うことが必要となる。

社員研修には様々な目的がある。すべてが実践研修である必要もなかろう。
要は目的に合った研修を上手く推進し、その目的を実現すればよいことである。
しかし、「実践」と銘を打つ以上は、上述のようなことを満たしていく努力が必要である。
肝に銘じて……。