本日配信予定のメルマガ掲載記事「温故知新:逆風時のマネジメント」から
記事に掲載できなかった部分をご紹介いたします。

当時と比較すると、業績的には追い風の企業が増えています。
13年前に書かれたこのトピックス。逆風時に限らないマネジメントのポイントも
あるやに感じます。ご参考になれば幸いです。


「逆風時のマネジメント〜メルマガ未掲載部分〜」
詳しくはHBJ出版局発刊の『サービス・マネジメント革命』を参照していただきたいが、
同書にスカンジナビア航空(SAS)の深刻な危機を乗り越えさせ、エクセレント・カンパニー
へと変身させたヤン・カールソン社長(当時39歳)の事例が取り上げられている。

1981年、SASは800万ドルの赤字決算。破滅の危機を迎えていた。
子会社の経営に当たっていたカールソンが本社社長として抜擢された。
その後、1年あまりのうちに7,100万ドルの粗利を出すことに成功したというのである。
カールソンの業績は、この数字が示す事実だけでも驚嘆に値するが、より特筆すべきは
SASの体質(組織文化)に大変革をもたらし、強力な競争優位性をもたらした点にある。

他の航空会社も景気後退の中で、懸命の経費節減によってサバイバルに血眼になっていた。
しかし、カールソンは全く逆の進路に舵を取った。総勢2万人の従業員と管理職に対して、
多大の時間と経費をかけて教育訓練を行ったのである。さらにカールソン自身が第一線の
個々の社員に対して、SASの目指す姿を誰よりも精力的に「伝道」してまわったのである。
そして競争優位性の確立に成功し、SASを卓越した企業へと変身させたのである。

この事例は、今の日本の企業に普遍的な回答を与えるものではない。
マネをしたからといって成功するのだったら、経営に失敗するはずがないからだ。
しかし、「ピンチはチャンスなり」という、ともすれば精神論的に使われがちな言葉が、
本当に実践されたときにもたらされる偉大な成果を我々に教えてくれる。
「悪魔のように繊細に、天使のように大胆に」という、戦略成功の秘訣を学ばせてくれる。

筋肉を強くするには負荷をかけなければならない。
アゲインストの風は、企業(ビジネス人)を鍛えてくれる負荷でもある。
順調なときには問題意識も湧かず、慢心し、重要な教えにも馬耳東風になりがちだが、
このような危機的ムードだからこそできることも多いはずである。

不運な現実ガエルにならないための、いくつかのポイントを提言して締めくくりたい。
1.「努力の空転」が最大の敵。「努力の焦点」をギリギリ絞り込む
  組織全体とメンバー個々人の力を、過小評価も過大評価もせず、強み・弱みを客観的に
  把握しないと、努力の焦点が狂って成果に結びつかない。冷静になりにくいときだけに、
  致命的判断ミスを犯しやすくなるものである。

2.行動させる。ケジメをつけさせる。
  使われない能力は開発されない。考えない人は思考力がつかないし、動かない人は
  行動力が身につかない。危機感・問題意識を強力なテコとして、頭と手足に大いに
  汗をかかせる良い習慣づくりのチャンスである。しかし、非常事態を口実とした
  デタラメを許すべきではない。将来の悪い文化を築くことにつながる。

3.理念浸透、意識改革、能力開発を推進する
  ビジネスセンスを磨き、技能を飛躍的に向上させるための、またとない教育の機会である。
  ビジネスの厳しさ、組織のありがたさ、プロ能力の重要性など、身にしみて実感させ、
  大いに負荷をかけて一気呵成に推進することである。
  特に、運命共同体の一員という自覚を高める働きかけが、強い組織文化づくりの鍵となる。

4.リーダーの指揮力を鍛える
  10人のメンバーを預かるリーダーは、50人の人生の幸・不幸を担っている。
  理屈では分かっていたこの事を、腹の底から自覚させ、強力なリーダーシップが
  発揮できるよう成長させるチャンスでもある。
  次世代のトップ・マネジメントの発見と育成も、今だからできる重要課題である。

5.外部にブレーンを求める
  上記の1.でも触れたが、問題の渦中にあると、どうしても状況に振り回され、
  本質が見えなくなる恐れがある。
  また、視線が社内に向きがちとなり、広い角度からの発想ができにくいものである。
  愛情を持って厳しくアドバイスしてくれるブレーンを持ち、問題の渦に巻き込まれない
  ようにすることも、自滅を防ぐためには重要なことであろう。

 以上、抽象的かつランダムではあるが、ご参考にしていただければと思う。
 また、私どもユニゾンとしても、このような状況の時にこそお役に立ちたいと願っている。
 快刀乱麻を断つというわけにはいかずとも、少なくとも真剣にご相談に乗る所存である。
 ご遠慮なく、弊社担当者にお申し付けいただきたい。